【おことわり】
こうした事件(とりわけ未解決事件)の詳細をお伝えする記事において、加害者・被害者の氏名をはじめ、関係する人物・組織などを匿名で表記するケースが多くみられます。
この匿名表記の主な理由には、「被害者(加害者)のプライバシー保護」「記事作成者のリサーチ力不足」などがありますが、本記事では事件に関わるすべての人物・組織を可能な限り実名表記としています。
本コンテンツにて、本記事筆者 オラクルベリー・ズボンスキがお伝えするリアルを感じてください。
以下、本編です。
“ハロウィーンのランチタイムに騒然”
コペンハーゲン湾―、
その透き通った水面に漂う不審な黒いバッグ。それはランチを楽しむ人々のひとときを一瞬にして凍りつかせた—。
事件が発覚したのは1986年(昭和61年)10月31日―、
その舞台は、北欧デンマークの首都コペンハーゲン。
この日、コペンハーゲン湾で昼食を摂っていたひとりのタクシードライバーが、海面に浮かぶプラスティック製の黒いバッグに気が付き、これをすくい上げる。
そして何の気なしにその中身を確かめると、バッグの中からは人間の下半身や脚の一部が突如として現れた。
デンマーク警察による捜査―、
これが進められると、発見された遺体が日本人女性である可能性が高いこと、これが明らかになる。
そこで日本警察が捜査に協力するも、現在に至るまで犯人特定・犯人逮捕には至っていない。
未だ未解決事件となったままの殺人、死体損壊・遺棄事件である。
1986年10月31日の遺体発見後―、
デンマーク警察はフロッグマンを投入し、港や周辺の海中を徹底的に捜索。
そして、11月7日までに遺体発見現場から約1.5km離れた海底から、同じくバッグに詰められていた頭部や上半身、腕が見つかる。これにより、バラバラ遺体の全パーツが揃った。
そして―、
デンマーク警察は、揃ったバラバラ遺体の血液型や歯形の特徴から、遺体はアジア系の人物であると断定。
その後、ICPOを通じて各国へ手配。すると、翌1987年6月に日本の警察庁が遺体とよく似た特徴を持つ女性を見つけ出した。
遠く離れた北欧の地で見つかった自国民女性と思しき遺体―、
日本警察は現地から遺体の指紋を取り寄せ、遺体本人とみられる女性のものと照合。するとこれが一致。
この結果を受け、日本警察も急遽デンマーク警察に協力することとなった。
本事件の被害者となったのは―、
当時、東京都葛飾区東新小岩に居住していた豊永 和子さん(当時22歳/無職)。ピルの治験ツアーに参加してヨーロッパに赴き、その後現地で何者かによって殺害された。
和子さんは都立高校を卒業後、千葉県にある短大に入学。ところが1983年6月にこれを中退してしまう。
その後は実家で家族と共に生活しながら、人材派遣会社による派遣アルバイト。いわゆるフリーターをしていた。
和子さんはこの治験ピルツアーに参加する前の1985年12月から1986年1月まで、韓国をひとりで旅行しており、韓国からの帰国後も家出同然で関西方面を周遊。
“定職に就かず、アルバイトでお金が貯まったら旅に出る”―、
このことから、和子さんの自由奔放なパーソナリティーが浮かび上がる。
やがて―、
そんな自由のひとに悪夢が訪れる。
ピル治験ツアーに参加した和子さん。そのツアーとは一体。【パート2】に続く―。
【フロッグマン】
いわゆる水中工作員。水中をメインフィールドとする戦闘員のこと。
【ICPO】
国際刑事警察機構の略称。
世界各国の警察機関から成る国際組織。国際犯罪の防止を目的とする。
加盟する国・地域は、実に192*にも及び、国際連合に次いでいる**。
非加盟の主な国・地域は、北朝鮮と台湾である。(2020年9月現在)
尚、日本国内では略称の「ICPO」で呼ばれることが多いが、海外では「INTERPOL(インターポール)」と呼ばれる。
*2017年時点
**国際連合の加盟数は193。ちなみに世界の国の数は196。(2020年9月現在)
【治験】
臨床薬理試験。
製薬会社が医薬品を販売するにあたり、その承認を得るために行われる臨床試験のこと。
この試験は自由意思に基づき志願した成人を対象とする。尚、治験の参加条件は基本として「健康であること」、しかし対象となる医薬品の特性によっては「特定の疾患を持つ者」といったものも存在する。
一般に、治験参加者には高額な報酬が支払われる。
【ピル】
経口避妊薬。
精子が子宮内に進入するのを抑止したり、受精卵が着床しにくくする。
物理的に避妊効果を得るコンドームよりもその効果は高い。