諏訪地方連続放火事件 -1-

※本記事はセクシュアルな内容を含みます

 

” 「自称」の闇 “

 

『諏訪地方連続放火事件』の概要

2006年(平成18年)の4月から5月にかけて、長野県諏訪地方で発生した連続放火事件。

一定の範囲内で小火(ぼや)から全焼まで、あちらこちらで不審火騒ぎが相次ぐ中で、やがて長野県諏訪市在住の女(当時20歳)が容疑者として浮上した。
この女は「ネットアイドル」を自称。当時のネット世界の一部では有名であり、またある程度の人気を獲得していた。

本事件は、夢みる世界と現実とのギャップを自認できず、羨望や卑屈に囚われたワナビーの抱える闇を象徴する事件といえる。

【ワナビー】
何かに憧れ、それになりたがっている者。また、それになりきっている者のこと。
語源は英語の俗語「wanna be (~になりたい)」。

 

本事件犯人について

 

平田 恵里香 (通称:くまぇり)


はじめに、くまぇり自身が当時書いたプロフィールを以下にご紹介する。
※「原文まま」であるため、読みづらい箇所があります。尚、赤字は筆者によるものです。

 

【HN】
y くまえり y
【HNの由来】
熊田曜子たんにソックリって言われるから
【性別】
女の子だっぴ X
【誕生日】
㍼60年10月5日だょ ス二十歳になりましたぁぁ
~でもお酒&タバコゎ一切辞めました
偉いでしょ G
【星座】
m天秤座なり m
【血液型】
純血な0型
親もぉばぁちゃん達もみぃぃぃぃぃんな0型なんだょ
だからすっごぃおおざっぱ
靴下とか違うの片方づつ履いたり普通にしてる…
【住んでいるところ】
薯キ野県の諏訪 署z訪湖が近くて空気が綺麗でぃぃ所だょ
遊びに来てね フ フ
でもゃっぱ都会に住んでみたぃなぁ~
【メールアドレス】
※2@ezweb.ne.jp
【似ている芸能人】
熊田曜子 どこへ行っても誰に会っても熊田曜子って言われる
【身長】
167㌢で高目だょ~
【足のサイズ】
24・5
【髪型】
髪ばっさり切って今ゎボブかな
ショートに見えるけど後ろゎ長い感じ テ
【自慢なこと】
絵と歌がゥマィ事
胸がF.Gカップな事
カクテルが作れる
゙ルゾイとチワワと猫2匹飼ってる事
背が高い事
動物の事に詳しい
それに負けず嫌い
曜子たんに似ている
【好きな男性のタイプ】
ぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇったぃに浮気しなぃ人
なら顔とか関係無い
でも暴力するのはダメ
それで優しい人なら完璧かな y
【好きな女性のタイプ】
ぇりか凄い人見知りするから…一杯喋ってくれて仲良くしてくれる子
気が合えばメチャハッチャケるけど S
【好きな芸能人】
熊田曜子
【好きなブランド】
シャネル yヴィトン y
【愛用の香水】
フラブパスポート フ 3年愛用してます フ
【愛車】
スズキのkei 揮ヘ ちょこまかちょこまかしてて可愛いょ y
【好きな動物】
虫以外なら動物なんでも大好き y愛してる y
【尊敬する人】
y熊田曜子ちゃん y
【今一番欲しいもの】
車とシャネルのバッグ y
【今一番行きたいところ】
今年のGWゎ京都へ旅行にいきますえ~ ヒ
【今一番やりたいこと】
~エステ ~
【よく遊ぶところ】
渋谷 ~原宿 ~新宿 ~秋葉原 ~甲府 ~どこかおもしろぃォススメぁったら教えてね y
【兎に角主張したい事】
見かけたら気軽に声かけてね
石ゎ投げないでね
今ジム通いして夏までにスリムボディをGetしてGカップを武器にビーチのアイドルになるぞぉ~ ツ y w y
【疑問に思っている事】
2ちゃんねる書き込み規制されてるの何でだろぅ
【ここだけの話】
熊田曜子たんと ハかなりの共通点がぁる… ハ ハ ハそれは ハ ハ ハ

くまぇりの「前略プロフィール」より
(「前略~」についての詳細は後述)

自己紹介(プロフィール)の中では”これでもか”というほどに、グラビアアイドルの熊田 曜子を強調している。
ところが最も注目すべきは、「二十歳になりました」と「酒とタバコは止めました」が同居していることである。

 

【くまぇり】幼少期から連続放火まで

幼稚園時代

幼稚園で飼育していたハムスターを殺す。
また「キレると噛みつく」といった行動をみせ、癇癪(かんしゃく)持ちであった疑いも。

 

小学校時代

特別学級に所属。学校ではいじめに遭っていた。
(「特別学級」とは、他の生徒と馴染めないなどの理由により、学校生活を送ることが困難な児童が編入されるクラスのこと)

 

中学校時代

入学してまもなく不良生徒と仲良くなり、それに伴い授業に出なくなる。(登校はしていたようである)
こうした不良仲間との遊びに明け暮れ、喫煙や飲酒、万引きはもとより、遊ぶ金欲しさにカツアゲ(脅迫)や着用済みの下着をブルセラショップに売っていた。
くまぇりは通称:「悪6人グループ」という不良集団のリーダー的存在であったといわれ、その見た目はヤンキーそのもので、1年生ながら3年生と恋愛をしたりと、見た目も行動も派手であった。
こうして目立っていたことが災いし、やがてくまぇりは上級生に目を付けられていじめに遭う。その結果、不登校となり、塞ぎ込んで引きこもりがちな日々を送るようになる。
ほどなくして、一部の上級生を味方につけて学校への復帰を果たしたくまぇりであったが、その後もやはりほとんど学校へは行かずに遊び歩いていた。

やがて中学3年生になったくまぇり―、
「中3」
といえば、一般には受験勉強に励むための大切な1年間であるが、くまぇりもこのときは”頑張ろう”と一度は誓う。しかしそれはすぐに崩れ、ヘアダイ(髪染め)、ピアス、化粧―と、”自分磨き”に力を注いだ。一時はこれを「美容意識」と転化して美容師を目指しかけるも、これに国家試験があることを知って断念。同時にこの頃から、芸能界への興味を抱きはじめた

 

ちなみに―、
1年生で既に授業にほとんど出なくなったくまぇりであったが、写生大会にだけはなぜか参加。このとき描いた諏訪大社の絵がとてつもなく上手かったともいわれている。
尚、写実的に描いた1年生の時とは異なり、
2年生以降の絵に関してはイラストのようであったという。
こうして授業に出ないくまぇりが写生大会にだけは律儀に参加する様をみると―、
彼女自身、絵を描くことは好きであり得意であったと想像できる。実際、これが後に彼女の”支え”となり、またキャリアとなる。

「諏訪大社」
日本最古の神社のひとつ

 

高校時代 (16~18歳)

高校生になったくまぇりは、次々と男を乗り換える中でひとりの男と結婚。これに伴い高校を中退し、夫婦で東京に移り住んだ。(一説には、千葉県であるとも)

かねてより憧れであった東京での生活は刺激的であったが、ここでくまぇりは若さゆえの暴走を加速させる。その要因となったのが、夫の暴力。そしてなにより大きかったのが、浮気癖であった。夫は日常的に家庭内暴力、また度々少女をナンパし、行為に至っていた。

そしてある日、これに不満を爆発させたくまぇりは夫を包丁で刺してしまう。当然これは警察沙汰となったが、夫婦喧嘩の範疇と判断されたこと、それが軽傷であったこと、そしてなにより夫が刑事告発しなかったことにより、これが刑事事件となることはなかった。とはいえ、この件でくまぇりは更生施設へ入り、協議離婚へと至った。
その後は援助交際や、ネットで自身の着用済み下着を売って金を稼ぐようになるほか、「マンバ」スタイルで渋谷に繰り出す日々を送るようになる。

●●●倶楽部 売ります[♀→♂]
★ぇーたん
女性
18歳のぇーたんだょッ(^ロ^)郵送先振りのみデスが下着類、汚物系、私服、足系などなどリクェストも受け付けますョッ!!ェロ写メとかゎ売りませんので!!パンツゎシミバッチリで買って下さった皆にゎ喜んで貰ってマス(*^m^*)チャント注文ぅけてカラ履くカラ新しさもィイみたぃデスッ(*´▽`*)値段ゎ聞きますョッ★☆コレカラも売ってぁげたぃカラなるべく希望で売ってぁげたぃデス(o・・o)/常連サンも募集してリュョッ♪とりぁぇずメールしてみてチョ(*・∀・)ゞ損ゎさせませぇ~ん (」*’∇’)」
8/22(日)15:58

(『ぇーたん』とは、くまぇりの別称。また初期のハンドルネーム)

尚、こうして稼いだ金でこの頃、くまぇりは二重まぶたにするための整形手術をしている。

16~18歳頃のくまぇり
化粧の具合から、在学中(結婚前)または結婚後の離婚前であると推察。一緒に写っているのは妹であると思われる。

 

16~18歳頃のくまぇり
マンバへと進化している。離婚後ではないかと推察。

 

【マンバ】※不要な場合は飛ばしてください
マンバ(ヤマンバ)とは、10代女性ギャルを中心に支持されるアバンギャルドなファッションスタイルのこと。その名は妖怪のヤマンバ(山姥) に由来しており、見た目が似ていることから名づけられた(諸説あり)。

妖怪のヤマンバ

その特徴は極端なまでに焼いた黒い肌、白い唇、過剰なほどのアイメイク(アイライン、つけまつ毛、白のコンシーラーなど)。
またロングヘアを基本とした茶髪もしくは金髪。そこへその他の派手な色のエクステ(つけ毛)を施す場合もある。服やアクセサリーには明るい色をふんだんに取り入れ、とりわけ蛍光色を好む。
またその他の特徴として、渋谷のセンター街に出没し、「SHIBUYA109」を聖地とする。好きなモチーフはハイビスカス。「超ウケる」が共通語である。
尚、一般に同一のものと認識されている『マンバ』と『ヤマンバ』であるが、ある方面に言わせれば、これらは異なる別物とのこと。その違いは、「マンバは目の周囲(上と下)を白くする」のに対し「ヤマンバは目の上のみを白くする」のだそう。
とはいえ、実際の境界線は非常に曖昧のようで、筆者としては「マンバ」は単なる「ヤマンバ」の省略形であると考える。
結局、「マンバ = ヤマンバ」で問題なさそうである。

人間のヤマンバ (マンバ)

 

夫の浮気を許せないあまり、”刺す”という傷害事件を起こしたくまぇり―、
(前出のプロフィールでも、「好きな男性のタイプ」として『ぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇったぃに浮気しなぃ人』と強調している)

この傷害事件により、実家の事業にも大きな影響が及ぶ。
くまぇりの実家は、「有限会社 サングルメ平田」という会社を経営。鮮魚の卸売りを行っていたが、その後同名の「サングルメ平田」という割烹料理店を営んでいた。ところが娘の起こした不祥事により、2004年11月3日に店を新装開店。これに伴って店名を『旬香の里』へと変更した。
新しい店は自宅兼店舗として建て替えられたが、これはおよそ8,000万円の融資を受けて行われたものであった。しかしながら、僅か1年半で店は閉店した。

(元々鮮魚の卸売業ということで、海鮮がメイン。店では、栄養士の資格を持つ三姉妹の長女が活躍していた様子。長女の手作りドレッシングをかけた海鮮サラダが人気メニューであったとも。
この一件までは、店は予約客でいっぱいと大変賑わっていたようである。とはいえ、料理がいかに素晴らしくとも、”事件”というものに対する世間の目はやはり厳しかったようだ)

くまぇりの実家兼店舗 (写真撮影日:2012年5月)

 


次なる【パート2】では、「19歳」に突入。くまぇりの暴走が加速する―。

 

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