市川一家4人殺害事件 -10-

これは『市川一家4人殺害事件』に関する記事の【パート10です。本編をお読みになる前に、ぜひとも【パート1】からお読みください。

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精神鑑定・起訴

日本中を揺るがす凶悪犯罪を犯し、逮捕された関。

4人を殺害、83歳の老女と4歳の幼女にも容赦ない残忍性、強盗殺人、度重なる強姦―、
これだけのことをすれば普通は、その後の自身の処遇について憂慮するところである。ところが逮捕直後の関は、自身の19歳という年齢、ひいては未成年という自らの身分を免罪符のようにみていた。そのため、自身の起こした残虐な事件を「少年犯罪」と軽微なものとして捉え、死刑の可能性はおろか刑務所に送られることすら考えていなかった。

“これで俺も少年院行きか”

“前科のない俺に死刑はあり得ない”

それは自らの犯した罪に到底釣り合わないほどの楽観的な姿勢であった。

関がこれほどまでに自身の処遇について楽観視していたのは、刑法についての知識がなかったことに加え、本事件以前に起きた「女子高生コンクリート詰め殺人事件」(1988年 / 昭和64年)の例が頭にあったからである。

「女子高生コンクリート詰め殺人事件」―、
これは凄惨を極める事件であったのにもかかわらず、犯人らが未成年であったことから死刑や無期懲役をいった厳罰が科されなかった。
しかしながら、女子高生コンクリ事件の約1年前に起きた「名古屋アベック殺人事件」では、犯人の19歳少年に死刑、17歳少年に無期懲役というように、未成年でも極刑が求刑されていた事実があった。
つまり関は世の中を知らない無知であり、正常な思考が欠如した人間であった。

なにより常軌を逸していたのは―、
関は逮捕後、自身の出所後の生活設計のために、高校時代に使っていた教科書類を母・Yに差し入れさせていたこと。

反省よりも、自分の将来。

 

千葉地検は勾留期限満期(3月27日)が迫る1992年3月25日、関の精神鑑定に伴う鑑定留置を千葉地方裁判所に申請。

これを申請した担当検事は、関に対して精神の異常があるとは考えていなかったが、事件の凶悪性・残虐性を鑑みて慎重を期した。

 

その後、関に対する鑑定留置が認められる。これは当初、6月25日までの予定であったが、最終的に9月上旬まで延長された。
この半年に及ぶ鑑定勾留期間中には、小田 晋による精神鑑定が行われた。
小田氏は精神鑑定の末、関について―、

「正常な知能を有する反社会性人格障害の診断基準にほぼ合致する爆発性・冷情性精神病質者だが、犯行当時も現在も精神病またはそれに等価の状態に陥ってはおらず、器質的精神障害の存在も認められない。意識状態は終始清明だった。よって犯行当時は事理を弁識し、その弁識に従って行動する能力は喪失しておらず、その能力が著しく障害された状態とも認められない」

そう結論付けた。

千葉地検は小田氏によるこの鑑定結果を踏まえ、「被疑者は逆上すると歯止めが効かなくなるが、完全な責任能力があった」との結論を出した。
その上で10月1日、強盗殺人・傷害など5つの容疑で、「刑事処分相当」の意見書付きで関を千葉家庭裁判所に送致した。
その後、千葉家裁は4回に渡り少年審判を行い、10月27日に関を千葉地検に逆送致した。

11月5日、千葉地検は関を本件における強盗殺人、傷害など5つの各罪状で千葉地裁へ起訴したほか、この前年となる1991年10月19日の傷害事件に関しても同日付で起訴した。


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【小田 晋】
:おだ すすむ
1933年7月28日-2013年5月11日(79歳没)
日本の医学者、精神科医。本事件当時は筑波大学教授も務めていた。
犯罪精神医学の権威として本事件のほか、新潟少女監禁事件やオウム真理教事件における元教団幹部・岡崎 一明の精神鑑定も行った。

重大事件(「練馬一家5人殺害事件」、「グリコ・森永事件」、「神戸連続児童殺傷事件」など)が発生した際にはメディアにも積極的に露出し、事件を分析・自身の見解を述べるなどした。

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【反社会性人格障害】
「反社会性パーソナリティ障害」ともいう。パーソナリティ障害(人格障害)の一種。
社会的規範や他者の権利・感情を軽視し、人に対して不誠実で、欺瞞に満ちた言動を行い、暴力を伴いやすい傾向を持つ。

反社会性人格障害の人は、薬物依存・アルコール依存・パラフィリア(≒フェティシズム)・犯罪などといった問題を起こしやすいとされる。
その発症は虐待やストレスに起因するとされているが、頭部に衝撃が加わったことによる物理的な要因で発症する場合もある。

症状は加齢とともに軽症化していく。

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【器質的精神障害】
意識・記憶障害や痴呆症、幻覚、妄想などを伴う。

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【逆送致】
裁判所が検察から送致された少年を調査した結果、刑事処分を相当としてその身柄を検察に送り返すこと。
要するに諸々の判断材料を鑑みた上で、”当該の少年を成人と同じように扱いなさい”という裁判所による判断のこと。

本事件においては、送致の段階で検察による「刑事処分相当」の意見書が添えられていた。つまり検察が裁判所に、”こいつは悪質です。ですから成人同様に扱うべきですよ”と意見したということ。このことだけみても、本事件がいかに重大なものであったかが分かる。

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少年犯罪はどのように裁かれるのか: 成人犯罪への道をたどらせないために

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