秋田園児殺害事件 -1-

 

“出会い系狂いの女とマッチングする男たち”

 

『秋田園児殺害事件』の概要

2006年、秋田県の大仙市内で4歳の男児が不審な死を遂げる事案が発生。

農業用水路にうつ伏せの状態の男児(諒介ちゃん/4歳)と、傍らで泣き叫ぶ母親。
当初、警察はこれを事故とみていたが、その遺体の様子から男児の死に事件性があると判断。

やがて警察が捜査を進める中で、男児の母親である進藤 美香が捜査線上に浮上。
その後、殺人容疑で逮捕となった―。

秋田県大仙市

 

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事件の解説

【本事件の犯人】進藤 美香 

高校時代の進藤美香

パーソナリティー

事件当時31歳。
秋田県潟上市昭和町(現・潟上市 / かたがみ)で生まれ、同県秋田市で両親と姉の4人家族の中で育つ。

無口で大人しい性格であったため、小学生時代から学校では目立つ生徒ではなかった。
中学生になってもそれは変わらず、手芸部に所属するなど絵に描いたような地味な生徒であった。しかし友達がいなかったわけではなく、美香が”親友”と呼ぶ女子生徒もいた。とはいえ、2人の関係は親友のそれではなく、いうならば主従関係。
つまり美香はその女子生徒をいじめていたわけであるが、ことのほかこれが深刻であり、女子生徒は大切な中学3年生の時に精神的不調を訴え、遂には不登校にまで至ってしまう。担任も美香のいじめは把握していたものの、もはや手に負えず。そのため、女子生徒には美香と別の高校へ進学することを勧めるほどであった。

その一方で、美香はいじめに遭っていたともいわれており、その鬱憤を晴らすために自分よりも弱い親友をいじめていた可能性が考えられる。
いずれにせよ、朴訥なその見た目からは想像できないほどの、粗暴な性格の持ち主であったといえるだろう。

 

秋田県立五城目高等学校
偏差値は40 (2021年現在)

それから秋田県立五城目高校を卒業した美香は、実家近くの縫製工場で働きはじめるが、これが長続きせずほどなくして退職。それからはいくつものアルバイトを転々とする日々を送っていた。
そうした中にあった
1996年(平成8年)、この年の4月に美香はひとりの男性と交際をはじめる。ところがその後すぐに男性は連絡を絶ち、美香からは連絡が取れない状態となってしまう。

美香はこの男性と自動車雑誌の文通欄を通じて知り合っている。
(96年当時は「ヤングオート」や「ホリデーオート」といった雑誌には文通欄があった。
この頃はまだ出会い系サイトはなく、こうした雑誌の中に出会いの場が存在していた。まだ個人情報保護法などなかった時代である)

美香は何度かの文通を経てこの男性と交際したと語る。しかし筆者は、事実はそうではないと考える。つまり文通を経て初めて会った際、美香は男性に好意を抱いたが男性はそうではなく、それっきり逃げられたということ。

 

“彼と連絡が取れない”―、
これに美香は、男性にはほかに女がいると疑った末に、驚くべき行動に出る。

男性と初めて会った1か月後となる同年5月、美香は酒屋や郵便局のポストなどに火を放ち、次々と不審火騒ぎを起こしていた。
その中で最も大きな騒ぎとなったのは、
JR奥羽本線「後三年(ごさんねん)駅」の放火。美香はこのとき駅舎のトイレ内に火をつけたが、幸いこれも大きな火事にはならなかった。しかしこの小火騒ぎで列車が手前の駅で緊急停止。これによりダイヤの乱れが発生。それだけでなく当然、駅舎にも損傷。大きな被害を与えたのだった。

後三年駅 (旧駅舎) 2005年9月18日撮影

こうした一連の犯行の中で、美香は必ず自ら119番通報していた。
すると消防は都度駆けつけてくるわけであるが、これこそが美香の狙いであった。単なるマッチポンプな犯行ではなかったのである。

そう―、
美香が文通で知り合った男性は消防士であったのだ。つまり美香は男性に会うために、その彼がいる消防署の管轄地域内で放火を繰り返していたというわけである。
やがて美香はこの連続放火により逮捕。計5か所に放火した非現住建造物等放火罪などで秋田地検に起訴され、有罪判決を受けることとなった。
尚、美香はこの連続放火事件の犯行動機を次のように語っている。

私が火の中で死んでいくのをみれば、彼は私の愛がどれほど深いか分かってくれると思った」 

これを美香が本気で語っていたのか、それとも保身のための噓なのかは分からない。いずれにせよ確かなのは、そんなことでは人の情愛を得ることはできないということである。
ちなみに美香は、この連続放火で火傷ひとつ負っていない。

語られるそのパーソナリティーは”無口で大人しい”。しかし蓋を開けてみれば、感情のコントロールが苦手な激情型。高校卒業後に顕著となる性的奔放。
そして排他性、利己的、無責任、良心の欠如、極端なほどの冷酷さというように、サイコパス様の人格の持ち主であることはみてとれる。


その後、美香は結婚する。いったい誰と―。【パート2】へ。

 

【マッチポンプ】
偽善的な自作自演のこと。(火をつけてそれをポンプの水で自ら消す様子に由来)
例えば自ら火を放って通報すれば、発見・通報したことを感謝される。

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