秋田園児殺害事件 -8-

これは『秋田園児殺害事件』に関する記事の【パート8です。本編をお読みになる前に、ぜひとも【パート1】からお読みください。

秋田園児殺害事件 -1-

秋田園児殺害事件 -2-

秋田園児殺害事件 -3-

秋田園児殺害事件 -4-

秋田園児殺害事件 -5-

秋田園児殺害事件 -6-

秋田園児殺害事件 -7-


 

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【考察】畠山は本当に殺したのか -結論-

疑念が残るまま、美香を操った「主犯」として裁かれた畠山であるが、一般に伝えられる犯行時の状況に筆者は強い違和感を覚える。

その理由の1つ目は、犯行直前に美香と畠山が駐車場に駐めた車の中でセックスに及ぼうとしていた点。
犯行現場とされている「道の駅 かみおか」であるが、平日でも利用客は多い。事件当日は月曜日、美香らが滞在していたのは16時頃であるが、この夕方というのは混雑する時間帯だ。となれば道の駅であるのだから当然、駐車場にはたくさんの車が駐まっている。そしてまた、10月下旬とはいえ16時頃ではまだ明るい。
こうした条件の中、
駐車場に駐めた車の中でセックスをしようとするだろうか。それも畠山の小さな軽自動車(スズキ・アルト)の中で。その狭い車内には4歳の諒介ちゃんもいる。何も分からない乳児ではないのだ。

事実として伝えられるこの犯行時の状況というものが、にわかには信じがたい不自然な話であることは、誰の目にも明らかではないだろうか。

「スズキ・アルト」の車内

ところが畠山は逮捕後の取り調べで―、
“道の駅に駐めた自分の車の中で、自分が諒介ちゃんの頭を殴打して瀕死にさせた。その後美香が「私に任せて」などと言って用水路に棄てた”と説明している。
しかしながら、畠山の車からは諒介ちゃんへの暴行を裏付けられる証拠は一切出なかった。諒介ちゃんは頭部が陥没するほどに殴打されているにも拘らず、畠山の車内からは一切の血液・尿反応も出なかった。(凶器は中身の入った缶コーヒーと伝えられている)
なにより畠山は、宿泊先の旅館では親子と見紛われるほど
諒介ちゃんと楽しそうに過ごしており、また諒介ちゃんも畠山に心を開いていた。
そこへきて、畠山を知る人たちが挙げるその人物像には「子ども好き」がある。その人間が子どもを殺害などという残酷なことをするだろうか。
そもそもであるが、畠山には諒介ちゃんを殺害する動機が見当たらないのだ。

また事件報道後、畠山を知る人々も伝えられた犯行状況には首を傾げた。

“それまで暴力的な一面をみせたことがなかった”

“誰かが諒介ちゃんに暴行していたらそれを止めるだろう

皆、そう口を揃える。
自ら暴行することはおろか誰かに暴行させることも考えにくいというのだ。筆者としても、ここまで挙げた種々の観点から、畠山が自ら暴行した可能性は否定せざるを得ない。
しかしながら現実は美香の供述どおりの、”畠山が結婚をちらつかせて美香に暴行させた”というのが裁判の事実認定である。果たしてこれが真実なのだろうか。
その真偽について臆度するためには、畠山と美香の関係性(パワーバランス)や恋愛感情などを知る必要がある。しかしその術がないので筆者の主観に基づく推察ではあるが、以下のように導き出した―、

まずは畠山
畠山自身は美香に対して恋愛感情を抱いていなかったと考える。なぜなら畠山にとって美香は単なるセックスフレンドでしかなかったからである。裁判や報道では便宜上「交際相手」「愛人」などと体よく伝えられているが、結局そういうことだったのだ。
畠山は察するところ、女性にモテるというタイプではなく、美香のほかには相手にしてくれる女性がいなかったものと思われる。その女性に縁のない畠山はセックスに飢えていたことは間違いない。
しかし容姿をみても何をみても、美香ならモテない畠山でも手が届く。畠山が美香と関係を持っていたのはこの一点に尽きる。

逮捕時、刑事が踏み込んだ畠山の部屋には、万年床の周りにアダルトDVDが山積みになっていたという事実もある。となれば、美香を性欲解消の相手とみていたとするのが素直だろう。そしてなにより、かつて子を持つ女性との結婚を親に反対されてそれに従った畠山が、子を持つ美香との結婚を考えていたとは到底考えられない。

つまり、進藤 美香という女は畠山にとって、単なるセックスの相手であり、人には言えない存在であった。
これは畠山の母親が美香の存在を知らなかったという事実から裏付けられる。いうなれば、事件まで畠山の口から美香の名が語られなかったということ。それはひた隠しにしておくべき関係であったということの証拠である。

以上だ。しかしこれはあくまで畠山目線のことで、もしも美香が畠山に入れ込んでいたなら、裁判の事実認定どおり、”美香が求婚、畠山がそれを利用”していた可能性も考えられる。

 

では、美香にとって畠山はどのような存在であったのだろうか。
自身の供述では、美香は畠山との結婚を熱望していたとしている。ところが美香のパーソナリティーからみて、それはまず考えられない。なぜならここまでお伝えしたとおり、美香は周囲を振り回してでも我を通すタイプ。時にそれは恫喝や暴力を伴うし、それでも思い通りにならなければ、なりふり構わない。
むしろ美香の方が他人を意のままに操ろうとする側なのである。故に、この事件の事実とされているような、下手に出て誰かの言いなりになるような女ではないのだ。

美香の畠山に対する恋愛感情がどれほどのものであったのか、そもそもあったのか、それは分からない。仮にあったとしても、求婚するほどのものはなかったと断言する。それは畠山に対してだけでなく、それまでの夫たちに対しても同様。
つまり、美香の供述「畠山から結婚をほのめかされており、その畠山を失いたくないその一心で犯行に及んだ」というのは虚偽である可能性が極めて高い

 

ここまで筆者の推察をお伝えしてお分かりいただけるように、筆者は畠山は冤罪であると考える。つまり、本事件は進藤 美香による単独の犯行であったということだ。
筆者のこの推察が事実であったとすると理解が及ばないのが、なぜ警察は畠山を犯人に仕立て上げたのかということ。もちろんそれは意図的ではなく、”犯人に違いない”という思い込みが招いたものであろうが。
いわばこのとき警察はミスジャッジをしたわけであるが、これには同じ年の4月に起きた「秋田児童連続殺害事件」が大きく影響しているものと思われる。というのも、当時の秋田県警はこの事件における捜査の不手際によってメンツがつぶれていたところであったからである。
そこへきて事件内容が酷似の本事件が発生。これには”またか”と県警も感情的になっていただろう。そしてなにより、メンツを取り戻すべく前のめりになっていたに違いない。
県警にしてみれば、ここできっちりとホシを挙げて事件を収めれば威信回復となる。もしかしたら畠山は、警察の勝手な都合による犠牲者となったのかもしれない。

「再審・えん罪事件全国連絡会」も畠山の冤罪を訴えている。

 

おわりに

伝えられる美香のパーソナリティーのひとつに「出会い系狂い」がある。当時マスコミはこれをピックアップして事件を「男漁りの女による子殺し」として、読者や視聴者の興味を引いた。
しかし美香の「出会い系狂い」並びに「複数男性との交際」は、事件とは直接的に関係ない。美香は男と過ごすのに夢中で、子どもをほったらかしにするというわけではなかったからだ。
恐らく美香はポリアモリー(多重恋愛)気質であり、セックス依存症(または予備軍)。これらは問題ないといえばない。
問題はやはり、そのパーソナリティー。これこそが本事件を引き起こした根源であり、事件前の周囲や事件後の捜査関係者、裁判所はこれにもっと目を向けるべきであった。
美香はなんらかのパーソナリティ障害を抱えていたと筆者は考えるが、それは美香のパーソナリティーの根幹ではない。いずれにせよ、複雑な人格構造を持つ美香に対し、精神医学の見地を取り入れた捜査および裁判を進めなくてはいけなかったのではないだろうか。筆者はそう考える。

 

本事件で有罪となった畠山、しかしそれは状況証拠なくして本人の自白のみ。彼は殺人犯か、それとも道連れにされた真の被害者か。事件の真実は2人だけが知っている。 

オラクルベリー・ズボンスキ(小野 天平)