城丸君事件 -2-

これは『城丸君事件』に関する記事の【パート2です。本編をお読みになる前に、ぜひとも【パート1】からお読みください。

城丸君事件 -1-


 

事件の解説

ワタナベくんの母からの電話―、

その日、朝から秀徳くんを捜し回った母親と兄であったが、とうとう秀徳くんは見つからず。2人はこのときどこか嫌な予感を覚えたため、午後12時半頃に豊平警察署を訪ね、捜索願を提出した。
そして事情を訊いた警察はすぐに捜索を開始。そこで周辺の聞き込みを行うと、これが意外にも秀徳くんの目撃者を見つけることができた。
その人物は工藤 加寿子(くどう かずこ)という名の女性で、すすきので働くホステス。二楽荘に2歳の娘とふたりで住んでいた。
彼女曰く―、

「今日の10時前くらいに、外の空気を吸いに出ました。5分くらいで引き返しましたが、アパートの前で小学生くらいの男の子が近づいてきました。そして・・・」

“ワタナベさんのウチは知りませんか?”

“階段を上ると玄関がある家だと聞いたんですけど”

「そう言うので、ウチの隣のワタナベさんのことだと思って、そう伝えました」

“どうも”

「男の子はそれだけ言って立ち去ったので、私もアパートの部屋に戻りました。その後のことは知りません」

彼女が教えた二楽荘の隣のワタナベさん宅。これは一軒家ではあるが、玄関が2階にある造りになっている。するとこれは秀徳くんが探していた家の特徴と符合する。
尚、このときちょうど付近を通りかかった近所の小学生が、二楽荘の階段を上がっていく秀徳くんの姿を見たと証言している。彼女の部屋は2階の1号室。

 

その後、秀徳くんの行方不明が誘拐である線も考え、警察は1月14日より公開捜査に踏み切った。
そこで二楽荘の隣のワタナベさんにも事情聴取をするも、これに応じることができるのは当該時刻に唯一在宅していた女子高生だけ。結局、彼女は警察の聴取にも、事件当日に秀徳くんの母親と兄に答えたことと同じ証言をするだけであった。
それから警察は念のためワタナベさん宅の家宅捜索も行ったが、家の中から秀徳くんは見つからなかった。

その後も警察は秀徳くんの捜索を継続するものの、有力な情報は何ひとつ得ることができず、この事案は秀徳くんの失踪という形で終結へ。
当初より警察は、秀徳くん唯一の目撃者である工藤 加寿子が秀徳くんの失踪に関する情報を握り、ひいては関与しているとして加寿子を被疑者としてマークしていた。そうした中、加寿子に捜査の手が及んだものの、肝心の証拠が何ひとつ出てこない。

そのため事件は迷宮入りするかと思われたが―。

 

工藤 加寿子 (くどう かずこ)

生年月日:1955年(昭和30年), 月日は不明(事件当時29歳)
出生地:北海道新冠郡新冠町節婦町(ほっかいどう にいかっぷぐん にいかっぷまち せっぷちょう)
学歴:新冠町立新冠小学校⇒新冠町立中学校 卒業
血液型:B型
身長:約167cm
体重:50kg前後(事件当時)
職業(事件当時):無職(事件の数か月前まではすすきの高級クラブのホステス)

 

裕福とはいえない家庭に育ち、苦しい生活を送る。加寿子は次女であり、兄と姉がいる。

中学卒業後は集団就職で上京し、そこで紡績工場に就職するもこれをすぐに辞めてしまう。これに伴って北海道に戻り、登別温泉のホテルの売店員として働いた。ところが19歳で再び上京し、夜の世界へ。
ホステスとしての日々を送る中、26歳で結婚。ところがこれが1年ほどで離婚。これにより再度、北海道へ戻っている。

84年1月の事件当時、加寿子はアパート(二楽荘)に娘と二人で暮らしていた。このアパートは秀徳くん宅から100mほどしか離れていなかった。


 

それから2年後―、
1986年(昭和61年)、秀徳くん失踪の被疑者であった工藤 加寿子はある問題を起こしていた。

この年、加寿子はある男性と再婚。その相手は和歌 寿美雄さんといい、当時35歳。新十津川町で農業を営んでいた男性である。

実はこの結婚に寿美雄さんの両親は猛反対していた。
“夜の街で生きてきた女性(加寿子)と農業一筋で生きてきたお前の生活はあまりにも違う、うまくいかない”として、結婚すると譲らない息子を説得していた。しかし寿美雄さんはその反対を押し切って結婚に踏み切っていた。
蓋を開けてみれば寿美雄さんの両親の言うとおりで、2人の結婚生活は問題続き。うまくいかなかったのである。

 

結婚時、寿美雄さんは加寿子に「農業の手伝いはしなくていい」という約束を交わしていた。そのため寿美雄さん宅に嫁いだ加寿子は、この結婚を機に仕事をしなくてもよい生活を送れるようになっていた。それをいいことに加寿子はパチンコ漬けの毎日を送り、家事すらせず。挙句の果てには娘を連れて遊びに出たまま1週間以上も帰らないなど、やりたい放題であった。その上、新築費用としての貯金2,000万円までも使い込む始末。
こうした加寿子の行動から、結婚まもないにも拘わらず2人は家庭内別居の状態に。やがて寿美雄さんの顔色は日を追うごとに悪くなっていき、体調不良を訴えるにまで及んでいた。
そんな中にあったある日、寿美雄さんは仲の良かった義兄に相談する。

「義兄さん、俺殺されるかもしれないよ」

この言葉を受けて義兄も、

「早く離婚した方がいい。すぐにだ」

このとき寿美雄さんは義兄の忠告を真摯に受け止め、加寿子と離婚する決意を固めた。

ところがこの日からほどなくして、寿美雄さんを悲劇が襲った―。


パート3】へ。

 

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【すすきの】


札幌市中央区にある歓楽街。東京以北では最大の歓楽街であり、日本三大歓楽街のひとつ。

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