新宿歌舞伎町ラブホテル連続殺人事件 -2-

これは『新宿歌舞伎町ラブホテル連続殺人事件』に関する記事の【パート2です。本編をお読みになる前に、ぜひとも【パート1】からお読みください。

新宿歌舞伎町ラブホテル連続殺人事件 -1-


 

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事件の解説

第二の事件 @コカパレス

第二の事件は1981年4月25日 22時頃に発覚。(第一の事件から36日後)

 

4月25日 21時頃、男女が「コカパレス」の203号室にチェックイン

ほどなくして男がひとりで退出。このとき男は利用料金を支払わずにホテルを出たため、これを不審に思った従業員が客室を確認しに向かう

室内で女性が死亡しているのを発見(22時頃)

 

被害女性は着衣が浴衣のみ。
首にはパンティストッキングが巻かれた状態であり、絞殺されたものと断定された。室内の遺留品はたばことライター、十字架のイヤリング、サンダルのみ。そのほかの所持品はすべて持ち去られていた。(彼女が着用していたすべての衣類も含む)
その後警察は女性の似顔絵を作成・公開。全国の警察機関などに張り出してその身元情報を求めたが、とうとう女性の身元は判明しなかった。

 

被害女性の特徴は以下のとおり―、

【推定20歳前後、身長約157cm】
見た目が非常に若かった。未成年であった可能性もあり。
その後警察は作成した似顔絵を元に、捜索願が出されている人物との照合を行った。また、公開された似顔絵をみた捜索願提出の家族が「うちの娘かもしれない」などと確認に来たりもしたが、該当者はなかった。

【肺がきれいであった】
客室からは女性的なタバコとライターが残されていた。
これは被害女性が喫煙をしていたという裏付けともなるが、肺がまだきれいであったことを考えると―、
地方から上京、そして夜の仕事に就き、その中で喫煙をはじめたというシナリオが描かれる。上京してすぐに殺害されたか。
また生活する地域的・環境的な意味でも肺がきれいであると監察医が指摘。
これはつまり、都市部ではない場所で生まれ育ったのではないかという見解。これを受け、またその顔立ちから警察は、女性が台湾人ではないかという見方を示していたことも分かっている。

【歯並びが悪く、虫歯が多かった】
警察は首都圏一帯の歯科医院所有のカルテを調べたが、女性の身元特定には至らなかった。

【腋に腋臭(わきが)の手術痕があった】

 

約1か月前に同様の事件が起きていたことから警察は当然、同一人物による犯行の見方を強めていた。またこの第二の事件の被害女性においても、第一の事件と同じくホステスであると考えた。そのため、現場ホテル周辺の接待飲食店や風俗店などを中心に当たった。しかしこの被害女性に辿り着くことはできなかった。

第二の被害女性に関するこれまでの情報を鑑みると、筆者は警察の”殺害された女性は台湾人ではないか”という見立てと考えを同じくする。それは、彼女が殺害された後に家族が探している様子がみられないことが大きな理由。
台湾人は同じアジア人でも、東南系はもちろん韓国人と比べて日本人と顔がよく似ている。すると仮に彼女が台湾人であったとしても、その顔立ちによっては見分けがつかなかったことも考えられる。
また筆者は女性がホステスであったとみているが、先述のとおり警察も同様であった。そのため、警察は歌舞伎町界隈のキャバレーや風俗店の類をしらみつぶしに当たったが、彼女の勤務先に行き着くことはできなかった。
仮に筆者や警察の見立てどおり女性がホステス(歌舞伎町の)であったならば、彼女がオーバーステイ(不法滞在)であった可能性も出てくる。となれば店側も警察から訊かれても、”うちの店にはそんな女性はいない”と知らぬふりをするだろう。

 

第三の事件 @東丘

※『東丘』の場所に関しては情報がないため定かではない。しかし筆者は、歌舞伎町2丁目の1番通りにあったのではないかと推察している。つまり、第一の事件現場となった「ニューエルスカイ」と同じ通りにあったのではないかということである。

第三の事件は1981年6月14日 19時40分頃に発覚。(第一の事件から50日後)

 

6月14日 18時30分頃、男女が「東丘」の一室にチェックイン

男が先にホテルを出る(時刻不明)

不審に思った従業員が客室を訪ねるも、室内からは応答なし。そこで中に入ってみると、全裸の女性が首にパンティストッキングを巻き付けられた状態で横たわっているのを発見(19時40分頃)

 

被害女性について

殺害された女性は、当時埼玉県川口市に住む17歳の少女。父親と母親、そして8歳下の弟の4人家族。

中学時代は演劇部。文章を書くのが好きであり、また読書好きでもあった。成績は学年トップクラスで、いわゆる優等生であった。
ところが高校入学と機にこれが激変。川口市内の女子高に進学した彼女は髪を染め、また派手な化粧。さらには暴走族と関わるなど、素行の悪さが顕著になっていった。
そして入学から1年足らずで、万引きが発覚したことにより退学している。

高校中退後は原宿をたむろしたり(竹の子族)、新宿のディスコ(クラブ)などで夜遊びを繰り返すほか、未成年ながら酒、さらにはシンナーに溺れ、その関係で補導されたこともあった。
彼女は文学的少女から不良少女・非行少女に激変した、いわゆる”高校デビュー”のクチであったが、根は素直な性格。またタレントになるという夢を持っていた。

 

少女には交際していた男性がおり、事件当日は埼玉県蕨市内で買い物やビリヤードをするなどして、その彼と遊んでいた。ところが16時半になると彼女は「うちに帰る」と言い出し、蕨駅前で彼と別れている。
(「うちに帰る」という交際相手に対する嘘から、彼女は事件当日に男と会う約束をしていたと考えられる。
またその前日は友人に対し、「演劇関係に詳しい人と知り合ったのよ。もしかしたら私、タレントになれるかもね」などと話していたことが分かっている。この”演劇関係に詳しい人”が、事件当日に彼女とホテルにチェックインした男とみられる)

少女と交際していた彼は、彼女と婚約していた。当時18歳、埼玉県蕨市居住。彼女と同様、高校を1年で中退。その後は市内のガソリンスタンドで働いていた。
このときまだ10代のふたりでは
あったが、互いの両親が結婚を認めるほど両者の仲は進展していた。

JR蕨(わらび)駅 西口 (埼玉県)

※余談ではあるが、筆者は2006年から1年ほど蕨市に住んでいたため、その辺りの土地勘がある。
遊び場所は東・西口両方にあるが、東口の方がパチンコ店や飲食店、スーパーなどが多く、栄えているという印象。とはいえ、西口にもカラオケ店やビリヤードができるような店はあった。いずれにせよ、少なくとも2006年当時でも遊ぶ場所はあまりなかった。
東口周辺には違法風俗店があったり、個人経営の書店が違法薬物を密売しているなど、アングラな街という印象が強かった。

 

事件当日 17時過ぎ(推定)―、
蕨駅前で彼と別れた少女は都内の新宿歌舞伎町にいた。
そして18時半頃、ホテル『東丘』の一室「箱根の間」に男とチェックイン。それからほどなくして、男はフロントに「帰る」と内線電話を入れている。その後、男は客室から出てきて小走りでホテルを後にしている。
このとき従業員2人が男と廊下ですれ違っており、その2人の証言によると男はスーツ姿であったという。

この時点で第一・第二の事件というように、近隣のラブホテルで相次いで殺人事件が起きていただけに、当時歌舞伎町のラブホテルでは利用客の挙動には目を光らせていた。
特に注意すべきは―、

“男だけが先に退出”

事件当時は「男だけ先に出ていったら、部屋には死体がある」などというやり取りが、周辺ラブホテルの従業員らの間で交わされた。

 

発見時、少女は手足をロープで縛られ、首にパンストが巻かれた状態。仮死状態であった。そのため直ちに病院へ搬送されたが、それからまもなく死亡 (20時55分頃)。死因は首を絞められたことによる窒息死(絞殺)
尚、このとき彼女の身元判明の手掛かりとなったのは、客室に残されていた1冊の本。しかしこれはただの本ではなく、川口市立図書館から貸し出された本であった。これにより警察が貸し出し記録を照会し、そこから彼女の身元へと辿り着いたということである。
ちなみに室内に残されていたのは、「朝子ニューヨークへ翔ぶ」という本であった。

後に少女の遺体を解剖した結果―、
胃からは約200ccのコーヒーが検出され、彼女がこのコーヒーを飲んだのは死亡の約2時間前と断定された。
彼と蕨駅前で別れたのが16時半頃、蕨から新宿まで電車で約35~50分。諸々を多めに見積もったとしても、彼女が少なくとも18時には新宿にいたことは間違いない。早ければ17時30分頃というのもあり得る。
これらのことから、彼女と男は歌舞伎町周辺の喫茶店などで落ち合い、それからホテルへ入ったと推察できる。一般的に、初めて会う男女がホテルへ入る前提であったとしても、ホテルへ直行というのは考えづらい。
このように、彼女が男と会ってまずは喫茶店でコーヒーを飲んだと考えると、死亡推定時刻(19時30分頃)と解剖結果(コーヒー摂取は死亡の約2時間前)が符合する―。

 

第一の事件は3月20日
第二の事件は4月25日
第三の事件が6月14日

歌舞伎町2丁目のラブホテル3軒で同様の犯行、そして連続性。
実はそれまで本事件は”東京の事件”という扱い、つまりローカルニュースに過ぎなかった。ところがこの第三の事件によって地方紙でも報じられるようになったことから、全国的に認知されるようになった。週刊誌などでも取り上げるようになったのはこの頃である。

 

事件後、少女と交際していた少年が語ったところによると、彼女との交際は順調であったという。さらに事件当日は彼女も機嫌がよく、なんの違和感なく蕨駅前で別れたとのこと。

“自分と別れた直後にわざわざ都内へ向かい、その数時間後に見知らぬ男とラブホテルに入った”

これを知った彼はショックを隠せない様子をみせた。
少女には、結婚を約束する彼も知らない裏の顔があった可能性が高い―。


パート3】へ。

 

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