北九州監禁殺人事件 -7-

これは「北九州監禁殺人事件」に関する記事の【パート7です。本編をお読みになる前に、ぜひとも【パート1】からお読みください。

北九州監禁殺人事件 -1-

北九州監禁殺人事件 -2-

北九州監禁殺人事件 -3-

北九州監禁殺人事件 -4-

北九州監禁殺人事件 -5-

北九州監禁殺人事件 -6-


 

※本編文章内で示す各人物の年齢は当時のものです

1997年

【松永】緒方一家の二重生活 -死へのカウントダウン-

緒方が湯布院でホステスになり所在不明となった”湯布院事件”―、
これについて緒方一家をアジトに呼び出したのをきっかけに、松永はその後も久留米に住む緒方一家(父・誉さん、母・静美さん、次女・理恵子さん)を夜ごと頻繁に小倉のアジトまで呼び寄せるようになる。

この会合で松永は当初、緒方との関係について、離縁を前提とした話し合いを一家と行っていた。
そこで緒方との離縁にあたり高額の手切れ金を緒方の両親に求め、これを飲ませて離縁話がまとまる直前になると、松永は”緒方との子ども2人は自分が引き取る”という条件を持ち出した。
これは子ども好きの緒方にとってみれば、離縁する上では厳しい条件であり、緒方自身の離縁する気を損なわせた。
(松永は端から緒方と離縁する気はなかった)

結果として離縁話は白紙に戻り、松永はその代わりに殺人者である緒方を匿う見返りとしての金を要求。世間体を気にする緒方一家はこれに従うほかになかった。
その後も松永は、緒方に対する問題としてさまざまな名目を作っては、ことあるごとに金を要求した。

 

緒方一家の二重生活—、
一家はそれぞれ昼間に仕事、夜に久留米から小倉のアジトまで行き、翌朝に久留米へ戻るという生活を送っていた。そのため皆、睡眠時間が少なかった。(車で往復約200km)
これにより、静美さんは久留米から小倉に向かう途中で居眠り運転による交通事故を起こし、首に損傷を受けてしまう。しかしそれでも尚、静美さんは小倉へ通い続けた。

緒方一家の小倉通いの中で松永は―、
緒方に関する話し合いの際、一家に酒を飲ませて家族同士の愚痴を引き出し、それぞれの弱みを握った。とりわけ父親に対しては、隆さんの殺害・解体現場である浴室の排管を交換させ、証拠隠滅に加担した負い目を負わせた。

やがて一家が金を用意できなくなると、松永は一家に対して通電などの虐待を行うようになる。
その後も松永はあらゆる手を使って、緒方一家から金を吸い取っていった。

 

【松永】緒方の姪・甥を人質化 -取り込まれた親子-

“妻と義父母が毎晩のように外出して明け方に帰ってくる”

これを不審に思っていた主也さんは、あるとき理恵子さんが小倉へ行く際に同行する。
奇しくもこれを機に、主也さんも一家3人の小倉通いに加わることになってしまい、そこで松永によって夫婦仲を壊されるという結果に。さらには隆さん殺害現場である浴室のタイルを張り替えさせられ、殺人事件の証拠隠滅に加担したとしてその責任まで追及されてしまう。
そしてその後も松永には元警察官という経歴を逆手に取られ、何かにつけて「元警察官たるものが!」と罵倒され、主也さんは精神的に追い込まれていく。

 

当初、自身の子どもたちを残して小倉に通っていた主也さんであったが、「子供たちを残してここまで来るのは心配」と松永に漏らしたのをきっかけに、松永は理恵子さんと主也さんの娘・彩ちゃんと息子・優貴くんを連れてくるよう夫婦を説得。

そしてその後―、
毎年8月に行われる小倉の夏祭りに合わせ、小倉アジトに呼び寄せられた彩ちゃんと優貴くん。ところが、これ以降自宅へ帰らせてもらえることはなく、幼い2人もまた松永の人質と化した。

 

【松永】緒方一家6人を完全支配 -マインドコントロール-

緒方家3人(父・誉さん、母・静美さん、次女・理恵子さん)の小倉通いが続く中、それまで一家の中で唯一の”無接触”であった主也さん親子にもとうとうその息がかかってしまう。
これを機に、緒方や幸子さんと同様、約束不履行(金銭関係)などを理由にして緒方一家6人にも通電がされるようになる。

 

1997年8月上旬 (理恵子さん・主也さんの子ども2人がアジトに監禁された月)


誉さんと理恵子さん、主也さんは勤務先を頻繁に欠勤するようになる

 

8月中旬


緒方の父・誉さんは、娘(緒方)に関する一連のストレスで体調を崩して入院
(恐らくPTSDかと思われる)

【PTSD】
別称:心的外傷後ストレス障害
命の安全が脅かされるような出来事(犯罪、虐待、事故など)によって強い精神的衝撃を受けることが原因で、著しい苦痛や生活機能の障害をもたらすストレス性の障害のこと。いわゆる「トラウマ」。

 

8月末


保育園児であった優貴くんが退園、小学生の彩ちゃんは転校先の小学校へほとんど通わなくなる

 

9月中旬


主也さん一家4人は、それまでの住まいであった緒方の実家(福岡県久留米市)から熊本県玉名市のマンションに転居
(とはいえ、一家がこの玉名市で居住した事実はなかった。つまり、書類上のみの転居ということになる。不可解である)

 

9月19日


主也さんはこの日を最後に出社しなくなる

 

9月下旬


8月中旬より入院していた誉さんは松永によって強引に退院させられる

 

そしてちょうどこの頃、指名手配犯であった松永と緒方逮捕のために、緒方家の親類が緒方の実家周辺を張り込むようになっていた。

そして11月中旬―、
こうした動きの中、自宅に戻った静美さんが警察官に指名手配犯2人の居場所を訊かれる。ところが、静美さんはこれに「知らない」と答えた。
そして警察官が立ち去った直後に松永へ電話をかけ、自宅に警察が張り込んでいることを報告した。

 

【松永】緒方の父・誉さんの奔走 -骨になるまで貪る-

誉さんは松永に金を貢ぎ続ける中で金が無くなると、農協から金を借りるようになる。そして、静美さんもまた消費者金融から借金をするように。

対して、理恵子さんと主也さんには”これ以上金が出ない”と判断した松永は、2人を退職させて退職金を奪うことを考える。
理恵子さんと主也さんは有給休暇を使い切った上で、この年(1997年)の10月31日付けで退職届を提出。理恵子さんに至っては、その後に元上司宅へ電話をかけ、退職金の早期支払いを要求している。

こうしてそれぞれが奔走する中—、
さらなる金策のために緒方一家は誉さんの父名義の土地売却を画策。ところが、一家の行動を不審に思った緒方家の親類が、資産保全を図る仮登記でこれに対応。
しかし、なんとしても土地の売却をしたい誉さんは親類に仮登録の解除を求めるも、これを断固拒否されてしまう。

この状況をみた松永は、一家に対して親類に仮登録解除を求める手紙を書かせて送らせる。
これにより、12月19日に誉さんと静美さんは土地の名義人である誉さんの父と会って仮登録解除について話し合うも、ここでもそれは拒否された。

やがて、「緒方家に警察が張り込んでいること」「誉さんの父が仮登記解除に応じないこと」を知った松永は、緒方家を金の生み出せない”用済み”として一家を監禁状態にした。

そして1997年11月下旬―、
誉さんは職場で同僚に「一服する(タバコを吸う)」と告げて外に出たのを最後に、静美さんは歯科医院の予約キャンセルしたのを最後にその姿を消した。
こうした様子から、地元では緒方一家が失踪したとの噂がにわかに広がった。

 

アジトであるマンションの狭い部屋—、
松永は監禁した一家に対して、「通電を主とした様々な虐待」「個々の弱みに付け込む脅迫」「互いに争い合わせるよう仕向ける」、こうすることによって一家を従属的に、また相互不信に陥らせた。
こうしてすっかり自分の洗脳下にある緒方や幸子さんのように、緒方一家への支配もまた確立されていった。

 

尚、緒方家が松永に貢いだ金は少なくとも6,300万円に上るといわれている―。

 

【緒方】2人目の殺害 -自らの父親を-

緒方 35歳

1997年12月21日―、
松永は土地の売却が阻止された責任が緒方家の家長である誉さんにあるとして、緒方に誉さんを通電させる。その結果、誉さんは死亡した。(第2の殺人)

理恵子さんと主也さんの長女である彩ちゃん―、
その祖父にあたる誉さんがかつて、彩ちゃんの願いをきかなかったことがあり、これにへそを曲げた彩ちゃんが「おじいちゃんなんか死んじゃえ」と言ったことがあった。
松永はそのことを覚えており、通電による虐待で誉さんが死亡した際、「お前がおじいちゃんの死を望んだから死んだんだ」と彩ちゃんに言って誉さん死亡の罪悪感を植え付けた。

尚、誉さんの遺体解体が進行中であったクリスマスや松永の長男・Aの誕生日には、アジト内でパーティーや記念撮影が行われた。


次々と死者が。いよいよ緒方一家は崩壊していく—。【パート8】へ。

 

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