新宿歌舞伎町ラブホテル連続殺人事件 -3-

これは『新宿歌舞伎町ラブホテル連続殺人事件』に関する記事の【パート3です。本編をお読みになる前に、ぜひとも【パート1】からお読みください。

新宿歌舞伎町ラブホテル連続殺人事件 -1-

新宿歌舞伎町ラブホテル連続殺人事件 -2-


 

事件の解説

第四の事件 @不明

1981年6月25日 23時頃、発生。第三の事件から11日目のことである。

被害者は30歳のホステス。
事件発生前、彼女はゲームセンターにひとりでいたところ男に声をかけられ、そのまま一緒にラブホテルへ。
チェックイン後、彼女は男に突如首を絞められたが激しく抵抗。すると男は彼女の財布から現金を奪い、そのまま逃げ去った。

こうして、幸いにも第四の事件は未遂に終わった。

 

【一連の事件】特筆すべき点

本事件は冒頭にも触れたとおり、公訴時効を迎えている。つまり未解決事件というわけであるが、本事件が迷宮入りしてしまった最も大きな要因は、ラブホテルという犯行現場にあったと筆者は考える。

 

この事件が起きたのは昭和56年(1981年)。
当時はちょうど防犯カメラが一般化しはじめ、商業施設にも導入されるようになっていた頃であった。

それまでは銀行のATMに設置されていたくらい。
また当時はまだ「監視カメラ」と呼ばれていた時代。現代においては”監視”という響きがよろしくないため、”防犯”という。

 

また防犯カメラの映像がカラー化。録画機能も搭載されるなど、社会全体の防犯意識が高まりつつある時代であった。
そのため当時は防犯カメラが当然存在していたが、ラブホテルには全く設置されていなかった。それはラブホテルが性行為を前提とする場所であるということ対する、プライバシーへの配慮から。それ故に、ラブホテルは建物全体がある種の密室空間であった。
つまり本事件のように建物内で何か起きても、その犯人を目撃できるのは唯一、従業員のみ。しかしながらその従業員も基本的に客とは非対面・非接触。そのため犯人側とすれば、ターゲットさえそこに連れ込みさえすれば、何らかの犯行に及ぶには絶好の場所なのである。
また、犯人の男は犯行の度にラブホテルを変えているが、これはやはり”犯行現場に再び訪れたくない”という犯罪心理によるものと思われる。そしてまたリスク回避のためでもあると考えられる。

そのため、本事件が迷宮入りした最たる要因は―、
防犯カメラがまだ一般化しきっていなかった当時の時代背景といえるだろう。
(犯人の映像はもちろん目撃証言も乏しかったことから、当然のことながら捜査に必要な容疑者の似顔絵などは作成されなかった)

 

本事件でみられた共通点、そして考察

【共通点 その1】
殺害された3人の体内から覚せい剤が検出されている

この共通点から導き出される考察:
これに関して、男が”無理矢理に摂取させた”という見方をする者がいる。しかし、わざわざそれをする意味が見当たらない。
また、いずれも注射痕がなかったことから、口もしくは鼻から摂取したものと考えられる。つまり、被害者らが自発的に覚せい剤を摂取したと考えるのが自然。さらに注射痕がなかったことを考えると、被害女性3人ともが男にあった時点では未経験者であった可能性も考えられる。男が覚せい剤の経口摂取の仕方をレクチャーしたか。

恐らく男は歌舞伎町に何らかの繋がりを持つ人物で、裏社会との関わりを持っていた。
例えばその職業は、風俗店経営者または従業員。もしくは接待飲食店や風俗店の常連。
そして男が見知らぬ女性に気軽に声をかけるなどナンパ慣れしている様をみると、容姿は優れており、ホストクラブのような容姿が重視される接待飲食業に従事していた可能性が高いか。つまり男が兼業の売人であった可能性が浮かび上がる。

それに対し、被害女性はいずれも風俗嬢であったり売春を行っていた。

 

【共通点 その2】
被害女性3人すべてが絞殺されていること。また、未遂に終わった第四の事件でも男は両手による絞殺を試みている。
第二の事件と第三の事件ではパンティストッキングを用いている。

この共通点から導き出される考察:
すべて絞殺であったこと、そして刃物や鈍器などの凶器らしい凶器を携帯していなかった様子から、男が出血を伴う殺害方法を好まなかったことが窺える。
少なくとも2度の殺害に使われたパンストであるが、これはそれぞれ殺害した女性が着用していた物を利用したと考えるのが自然。というのは、いずれの事件においても殺害前に性行為が行われたに違いないからである。となれば、自ずと女性はパンストを脱ぐことになる。

尚、第一の事件の被害女性は男と会ったときにパンストを着用していなかった可能性がある。
また第四の事件の被害女性は性行為を伴わずに襲われたとみられる。つまり客室に入室後すぐに犯行に及んだと考えられ、そこから男の焦りのようなものが感じられる。

 

【共通点 その3】
男の目撃証言がよく似ている。

第一の事件:「若い男性」
第二の事件:「30代のサラリーマン風(スーツ姿)」
第三の事件・第四の事件:「身長160cm台、丸顔、黒ぶちメガネ、30代のサラリーマン風(スーツ姿)」

この共通点から導き出される考察:
これら目撃証言の類似、そして
犯行様式の類似歌舞伎町2丁目(ラブホテル街)という限定的な範囲、約3か月という比較的短期間で連続的に発生したこと。こうしたことからみて、同一犯による連続殺人事件であることはまず間違いない。


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