北九州監禁殺人事件 -4-

これは「北九州監禁殺人事件」に関する記事の【パート4です。本編をお読みになる前に、ぜひとも【パート1】からお読みください。

北九州監禁殺人事件 -1-

北九州監禁殺人事件 -2-

北九州監禁殺人事件 -3-


 

※本編文章内で示す各人物の年齢は当時のものです

1985年

【緒方】徐々にマインドコントロール下へ -心身の疲弊、そして自殺未遂-

当初、緒方に優しく接していた松永—、
ところが緒方が男友達の話をしたのをきっかけに、松永は緒方に暴力を振るうようになる。
さらにそれだけでは収まらない松永は、緒方が昔つけていた日記帳を持ってこさせ、書かれている内容(男性関係に関するもの)について詰問しながら殴るなどした。

悪化の一途を辿る暴力、その中で松永に信用してもらえる方法を懇願する緒方—、
これに対し、松永は緒方に右乳房へ煙草の痕、右太股に自身の名前の入れ墨(“太”)を刻ませた。
また、松永は緒方に知人男性らの元に電話をかけさせ、自身が用意した文章を緒方に読み上げさせる形で、緒方の知人男性らを罵倒させた。
こうして松永は緒方のあらゆる男性関係を断ち切らせた。

日常的に行われる松永からの暴力や理不尽な扱いにより、緒方の心身は次第に疲弊していく—。

 

1985年2月 緒方23歳

心労と睡眠不足による過労のため、緒方は勤務先の幼稚園で倒れてしまう。

そしてそれから数日経った2月13日―、
緒方は実家で自殺を図るも救急車で病院へ搬送され、これが未遂に終わる。
(このとき緒方の両親は救急車のサイレンを鳴らさないよう求めるなど、世間体を気にしていた)

松永は緒方を2月15日に退院させるが、ここで実家には帰さずに自分のアパートへ連れて帰る。
そこで、「自殺されたら、お前の家族やら警察やらにいろいろ訊かれて迷惑だ」との言葉を浴びせ、以前にも増す暴行を加えた。
さらに松永は、「お前との不倫関係が妻に発覚したら損害賠償を請求される」と脅すほか、緒方の裸の写真を撮影。
また、緒方に幼稚園教諭を辞めさせて自分の会社で働かせたほか、緒方の両親との関係を断たせるために分籍までさせた。

このように松永は恐喝、暴力、セクシャルハラスメントなど、あらゆる方法で緒方を自らに従属させた—。

 

1986年

【緒方】妹の結婚 -深まる家族との確執-

長女(緒方)の結婚相手を跡取りにするつもりであった緒方の両親—、
しかし長女である緒方が分籍して家を出てしまったために、1985年に専門学校を卒業して歯科衛生士になっていた緒方の妹・理恵子さんに見合いを勧めた。

【緒方の妹 理恵子さん】
1965年生まれ。歯科衛生士。
同級生の友達と比較すると真面目であり、親の前では大人しかったが、姉である緒方と比較すると親の目の届かない場所では活発で遊び好きであった。
また、結婚前には妊娠中絶を経験し、結婚後も職場不倫するなど複数の男性との肉体関係を持っていた。姉の緒方と比べると、貞操観念は無いに等しいといえる。

 

1986年7月 緒方24歳

理恵子さんは当時交際していた男性がいたにも拘わらず、両親が設けた見合いで知り合った農協職員の男性・主也さんと結婚。
姉である緒方と同じように、従順に躾けられた気の毒な妹の姿がそこにはあった。
(理恵子さんは結婚式前夜まで泣いていたという)

【緒方の義弟 主也さん】
1959年4月生まれ。福岡県久留米市出身。農家の次男。
地元の高校卒業後、千葉県警の警察官になるも、父親の看病を機に退職。実家に戻り、緒方の父・誉さんが勤務する農協の職員となる。後に誉さんと同じ職場という縁で理恵子さんとの見合いに至った。
優しく生真面目な性格。

 

家庭のしきたりによって決まった望まぬ結婚—、その結婚式では約200人が集まって盛大に行われた。
(この結婚式に参加した理恵子さんの友人は彼女の花嫁姿をみて、同情の涙を流したという)

主也さんは理恵子さんと結婚したことで緒方の両親と養子縁組、婿入りする形で理恵子さんと夫婦になり、これに伴い緒方の両親と同居することになる。

 

一方、姉である緒方は―、
妹・理恵子さんの結婚式前に騒動を起こしていた。

緒方は松永の指示で実家に電話をかけ、「家を無茶苦茶にしてやる!」「うちの財産をあいつ(主也さん)にやるのか!」などと脅迫めいた言葉を浴びせていた。
それだけに留まらず、緒方は主也さんの実家や親戚に「財産目当ての結婚だ!」などと言って因縁をつけて回った。
分籍によって勘当されていた緒方は、この一件で両親だけでなく、妹夫婦との確執を深めることとなった。言うまでもないが、緒方は理恵子さんの結婚式には出席していない。
主也さんにとっては義姉である緒方であるが、この時点で主也さんとは面識はなく、”何かと問題を起こす義姉”という厄介な存在であった。

 

1987年―、
理恵子さんと主也さんの間に長女・彩ちゃんが誕生。1992年には長男・優貴くんが誕生。
子煩悩であった主也さんは子どもたちを可愛がり、理恵子さんと主也さんの家庭は少なくとも表面上は円満であり、周囲には”仲の良い家族”に映っていたという―。


着々と緒方をマインドコントロール下に置いていく松永。悪魔の如き松永はいよいよ緒方家へと”入っていく”―。【パート5】へ。