井の頭公園バラバラ殺人事件 -4-

これは「井の頭公園バラバラ殺人事件」に関する記事の【パート4です。本編をお読みになる前に、ぜひとも【パート1】からお読みください。

井の頭公園バラバラ殺人事件 -1-

井の頭公園バラバラ殺人事件 -2-

井の頭公園バラバラ殺人事件 -3-


 

事件の動向

遺体発見後、事件の管轄となる三鷹警察署は特別捜査本部を設置。さらに警視庁捜査一課と連携をとり、合同捜査が開始された―。

警察の間では、”バラバラ殺人事件の犯人は身近な人間”という定説があり、本事件もこれに倣って誠一さんの身近な人間から洗っていくことになる。
誠一さんの親族をはじめ、同僚、元同僚、小学校から大学までの同級生・同窓生に至るまで、さらにはかつて参加していたボーイスカウトの関係者までもが捜査対象となった。
その数は実に数百人にも上ったとみられている。それはまさに”しらみつぶし”ともいえる網羅的な捜査であった。

 

“バラバラ殺人は身近な人間が犯人”

根拠のないジンクス―、妻の早い捜索願提出―、
これらにより、悲劇のヒロインであるはずの誠一さんの妻が真っ先に疑われることになってしまう。

【バラバラ殺人事件のジンクス】
遺体をバラバラに切断する目的のひとつは、「遺棄をしやすくするため」。
そしてもうひとつは、「遺体の身元を遅らせること」。これを言い換えるならば、”殺人者が遺体の身元判明を強く恐れている、つまりそれは身近な人間である”―、というロジックからこのジンクスは生まれたと思われる。

そして―、
捜査は様々な角度から進められた。

怨恨による殺人の線からは―、
誠一さんの交友関係を徹底的に調べ上げるも、男女関係や金銭トラブルといった怨恨に結びつくような話は出てこなかった。

サイコパスによる快楽殺人の線からは―、
事件エリアにあるレンタルビデオ店の顧客データを洗い、猟奇的な描写を含む作品に強い関心を示す客をマークするも、確信的な容疑者には結びつかなかった。

暴力事件や交通事故に巻き込まれた線からも空振り。捜査は難航を極めた。

尚、残虐な犯行や謎めいた事件の様相から、一部ではオウム真理教による犯行説も持ち上げられていた。これは当時、オウム真理教が活発に活動し、様々な事件を起こしていたことで流布した。とはいえ、本事件においてオウムが関与していたといえる証拠はなにひとつない。
(事件から約26年経過した現在においても、このオウム関与説は根強い。/ 2020年9月時点)

 

井の頭公園を三鷹市と共に跨ぐ武蔵野市―、
所轄である三鷹警察署に対して、応援体制を取っていた武蔵野警察署などの近隣警察署。
こうした応援部隊は事件発生からわずか1か月後には引き揚げてしまい、本事件における捜査は非常に息の短いものとなった。
実はその要因となったひとつの事故がある。

本事件発覚から3日後1994年4月26日―、

『中華航空140便墜落事故』が発生。

【中華航空140便墜落事故】
名古屋空港(現:名古屋飛行場)で中華航空(現:チャイナエアライン)が起こした事故。
同社が起こした事故としては最悪のもの。日本の航空史上でもワースト2の惨事となるほどの大事故であった。
ちなみにワースト1は、言わずと知れた昭和最悪の航空機事故―、「日本航空123便墜落事故」(死者520人)である。

 

“中華航空機が墜落した”

乗員乗客271人中264人が死亡する悲惨な航空機事故―、
これをマスコミが大きく取り上げ、各局・各誌がこれを集中的に報道。これにより、本事件に関する報道が一気に激減した。これに伴って、本事件に対する世間の関心も大きく薄れてしまった。
(本事件に対する報道が収まったのは、事件の新情報が乏しかったことも起因している)

そしてこれに追い打ちをかけるように、翌年(1995年)3月—、
オウム真理教(以下:オウム)による『地下鉄サリン事件』が発生。マスコミの関心は一斉にこれに向き、そして警察の人員がサリン事件に召集されることとなる。
これにより、本事件に配備されていたすべての警視庁捜査一課捜査員、三鷹警察署の署員は一旦の引き上げを命じられ、特別捜査本部は解散となった。
本事件における捜査期間わずか11ヶ月、これは事実上の捜査打ち切りであった。

 

「航空機事故」「サリン事件」によって”上書き”されてしまった本事件―、
ところが同年5月、オウムの教祖であった麻原 彰晃が逮捕される。これによりオウムの勢力が低下、次第にオウム関連の問題が収束に向かう気運が高まった。
そこで、”再び本事件へ警視庁捜査一課が投入、ひいては特別捜査本部の再設置”―、
かと思いきや、そうはならなかった。

結果、本事件における引き続きの捜査は三鷹警察署単独で行われることになるも、一度手を引いたことで捜査員たちの士気が低下していたことは否めず、やがて捜査は暗礁に乗り上げる。

そして、2009年4月23日 午前0時―、
『井の頭公園バラバラ殺人事件』の公訴時効が成立した。


次なる【パート5】では、いよいよ事件の真相が—。

 

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